【自然物が苦手な人のための良書】『物理表現のイラスト描画』をレビューしてみた
先日Twitterのタイムラインを眺めていたらこんな書籍が流れてきました。
「物理表現のイラスト描画」

少し気になったので購入して読んでみたところ
自然物が苦手な人にとっては
間違いなく特効薬になる内容だなと感じましたので
今回はこの「物理表現のイラスト講座」について
レビューしてみました。
この本のタイトルを見ていきなり
「読んでみたい!」と感じる人は正直
少ないかと思います。
「物理」っていうと小難しそうですし、
なんだか学校の勉強みたいなイメージを持ってしまいますよね。
このタイトルを見ただけで「これは良書の予感!」
なんて感じるのは相当嗅覚の鋭い方だと思います。
そういう鋭い方は前半は飛ばして
一気に後半の具体的なレビューを見ていただければと
思いますが、まずはこの本がどう良書なのか
ということからご紹介していきます。
この本の何が凄いのか
結論から言うと、この本で得られるのは
「想像して描く力」です。
具体的に言うと、資料をそこまで見なくても
すらすら描けてしまうような力のことです。
もちろんそれが初めて描くものであってもです。
「物理」と「想像して描く力」に一体どんな関係が、と思われるかもしれませんが
その都度資料ばかり探して絵を描く人と、あまり資料を見なくても絵が描ける人
この違いって一体なんだと思いますか?
単にどれだけ描いてきたか経験の差だと思うでしょうか。
実は、この決定的な違いを生むのは「いかに観察してきたか」ということです。
上達するには「軌跡」を見る
観察が得意な人ほど結果ではなく軌跡を見ます。
例えばキャッチボールをする時、
落下地点ばかり見ていてはいつまでも予想できるようになりませんが
ボールの軌跡は半分くらい見えると
自然とキャッチする手の場所もなんとなく分かってきますよね。
勉強で言うと、答えばかり見ても自分で解けるようにはなりませんが
解き方に注目することで、自然と似たような問題は解けるようになります。
これも、軌跡から落下地点を予想するのと同じことです。
落下地点を「答え」だとすれば、軌跡は「解き方」と考えることもできます。
答えを見てそれを写すだけでは、なかなか自分で解けるようにはなりません。
つまり、スポーツも勉強も、結果ばかり見ていては上達できません。
軌跡に注目することで上達できるんです。
では、絵を描くことで考えるとどうでしょう。
他の漫画や写真を見て描くことは、言うなれば答えを写すことと一緒です。
確かに全く同じ絵は描けるようになるかもしれませんが
それから2秒後の状態が描きたい時、新しい資料を探さずに描けるでしょうか?
もし、風向きが変わったら?
そこにいる人の立ち位置が変わったら?
視点が変わったら?
場所、気温、時間帯、力加減
量、質感...
タイミングや条件が変われば当然、資料とは違う動きになります。
その度に新しい資料を探していたら、そりゃ効率悪いですよね。
かといって、どんな条件でも対応できるほど数をこなして覚えておくなんて
どれだけの時間と手間を費やせばいいか分かりません。不可能に近いです。
どの角度からでも人間が描けるというのは
全ての角度から描いたことがあるからではありません。
人間の体の構造と、見る角度でどう変わるのかを理解しているから
その方向からどう見えるのか想像できるのです。
同様に、どんな動きでも描けるというのは
全ての動きやタイミングを描いたことがあるからではありません。
その動きがどんな軌跡を辿るのかを理解しているから
「この瞬間手足はこの位置に来るだろう」と想像して描けるのです。
想像して頭の中でシミュレーションできれば
ある程度イメージで描けるようになります。
いちいちその条件に合った資料を探す必要も無いので
描くスピードもそれだけ速くなります。
つまり、想像で描く力がつけばつくほど
時間をかけず、思い通りに描けるようになるのです。
想像で描くための前提
では、想像で描けるようになるためには何が必要かというと
まず描く対象を「十分に理解すること」が不可欠です。
描く対象がどんな形なのか、どんな動きなのかが分からなければ
シミュレーションのしようがありませんよね?
頭の中でシミュレーションするためには
「この角度からはこう見える」
「この物体は風が当たるとこう動く」
といった、シミュレーションする対象についての理解が必要です。
しかし、この「理解する」というのは結構大変な作業です。
2,3種類くらいであれば短期間でもなんとかなりますが
描きたいと思ったシーンに必要な物の大半を自由に描けるくらいとなると
小さい頃から「観察」「理解」「実践」
を繰り返してきたような人でなければ厳しいものがあります。
確かに時間をかけて一つ一つ学んでいったほうがより深く理解できますが
やはりそればかりに時間をかけていられる人ばかりではありませんよね。
なんとこの一冊には、そういう自然物をずっと観察して
絵に応用してきた人の知識がまとめられているんです。
結局どんな本なのか?
この本には、仕組みと描き方がまとめられています。
例えば第一章の「炎」を見てみると
「物がどうして燃えるのか」
「どのように燃え広がって行くのか」
「炎の描き方」
について、「物が燃える」「建物が燃える」など
場合分けされてまとめられています。
炎の仕組み





炎の描き方




デジタルでの描き方


このように「仕組み」と「描き方」でまとまっているため
すぐに自分の絵に応用しやすい構成になっています。
主な用途
普通自分なりに想像して描けるようになるまでには
観察して、理解して、知識を元に描く
ということを繰り返して、自分なりにまとめていくのですが
この本を読むだけで、目次にある全ての自然物について
「観察」をすっとばしてまとまった知識を得ることができます。
仕組みや描く際のポイントは読むだけで押さえられるので
あなたがすることは読んで得た知識を元に描くだけです。
通して一読しておけば、知識としてストックされるので
いざ描く前にもう一度読み返せばすぐ
その項目に関する情報が整理できます。
あとはそのイメージを元にシミュレーションして、
自分なりに描いてみればいいんです。
描いた絵が変だなと思ったらイメージに近い資料を探して「答え合わせ」することで
自分の想像とのズレを修正していけば、どんどん正確に想像できるようになってきます。
これを繰り返していけば、いくら想像して描くことが苦手な人だって
イメージで描けるようになっていきます。
繰り返しますが、この本を持っているだけで、
自然物に関してのまとまった知識と
必要な時に見返すことのできる環境が手に入るのです。
どんな人におすすめ?
一般的には、こういう知識を得るためには
地道にネット上の断片的な知識や資料を必死に探したり
実物や動画での観察を繰り返して少しずつ学んでいくものです。
好奇心が強かったり容量のいい人は
少し見ただけでも要点を汲み取ってすぐ絵に応用できるんですが
普通の人は、自分の中でまとめるまでに時間がかかったり
せっかく知識としてまとめられても、使っていないとすぐに忘れたりします。
しかも、何かを表現する上で必要なものは、自分の興味のあるものばかりとは限りません。
興味の無い分野ほど調べたりまとめるのって苦痛ですよね。
あまり好きじゃないものの勉強についてはできるだけすっ飛ばして、
必要な時だけさっと取り出せるようにしておきたい
僕はこの本を、そういう方にお勧めします。
自然物が好きで進んで描いていきたいというような人は
こういう書籍なんて読まなくても勝手に興味を持って理解を深めて体系化していきます。
むしろ、
自然物は苦手
あまり興味も無い
でも描かなきゃいけないことがある
こんな絵師にとって
仕組みの解説があって
実際の描き方の解説が書かれていて
パターン分けまでされている
これほど都合のいい本があるでしょうか?
さらにこの本はKindle版も公開されていますので、購入した瞬間からすぐに読めます。
デジタルが苦手という人は、必要な時に印刷してもいいですし
実物を買って本棚に置いておくだけでもかなり心強いはずです。
まだそこまで安いといえるほどの価格ではありませんが
この本の価値に見合うかどうかは、是非あなたの目で確かめてみてください。
この書籍の良い点と悪い点
良い点
・雑学を見聞きして「なるほど」と感じるような面白さがある
・繰り返し実践しながら読むだけで確実に、
観察してこなければ得られなかった知識を短期間に習得できる
悪い点
・少し勉強臭さがある
・漫画や雑誌のように気楽に一読するだけで身につけるのは難しい
・習得には、実践しながら繰り返し読む必要がある
この書籍に向いている人いない人
上記の点をふまえると、この書籍は
決して全ての方にお勧めできるものではありません。
あくまで一つの目安ですが、
最後にこの書籍に向いている人と向いていない人を
下記にまとめておきます。
こんな人におすすめ
・自然物に苦手意識を持っている方
・自然物をじっくり身につけていく時間が惜しい方
・想像して描く力を習得したい方
・絵の上達のために、ある程度の努力ができる方
・タイトルだけでこの本に価値を感じた方
あまりおすすめできない人
・自然物が得意な方
・既に観察力のある方
・勉強臭い雰囲気を感じるだけで鳥肌が立ってしまう方
・一から自分で発見して行くことに楽しみを感じている方
・たとえ良書でも繰り返し読んで理解を深めていくことが嫌な方
- 著者プロフィール
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ふぉくすけ
お絵描き・小説・ゲーム制作など
創作活動が大好きな元SE。
グラフィッカーになる夢を諦め一般企業に
就職するも、多くの理不尽を当然のように
受け入れながら働く「雇われる生き方」
そのものに強い違和感を持つ。
会社員として働きながら生き方の模索を続け、
Web媒体の収入が月給を上回ったため独立。
現在は、お絵描きをはじめとする、
創作活動で食べていきたい人に向けた
情報発信をメインに活動中。
現在キャンペーン期間中にて
お絵描きで自由を手に入れるための特別講座
を無料配布中
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