自分のスキルを活かして教える側になるためには

先日こんな相談メールが届きました。
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私は絵を描くのが好きで得意なので、それを生かして
絵が描きたいけど苦手という方々に絵の描き方を教えたいと考えています。
ですが、私は絵を描くのが苦手という方たちが、
どういった点で苦手意識を持たれているかを知らず、
どのように絵の描き方を教えるのが良いのかわかりません。
そこで、絵の描き方を教える時の参考にしたく、
絵が苦手な方たちはどのような悩みを持っているのか教えていただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
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たびたびこういった相談を受けるのですが
もし自分のお絵描きスキルを活かして本気で何かしようと考えているなら
自分の思い浮かばないような悩みを持ち出して
解決しようとするのはあまり得策ではありません。
なぜかというと、自分の経験を活かして悩みを解決できるのは
自分と同系統のタイプの人だけだからです。
例えば友人付き合いでお絵描きの時間が取れない
という悩みに対して
「友人と付き合うのをやめる、または減らす」
といったアプローチで解決できるかというと
それでいいという人もいれば
友人付き合いを捨てることはできないという人も当然いますよね。
「スキマ時間を探して描いていけばいい」というアプローチでも
細かい時間で少しずつ完成させられる人もいれば
まとまった時間が無ければ描けないという人もいます。
悩んでいる人の多くは色々なアプローチも考慮したけど
いずれも異なる点で問題があるから悩んでいるんです。
それは人によって大切にするものが違うからです。
あなたにとっては大した問題ではないことも
その人にとっては問題だと感じたから悩んでいるのです。
そして自分の価値観とかけ離れた悩みを抱えていると分かるとつい
「地球規模で考えれば君の悩みなんてちっぽけなもんだ」というような
要するに視点を変えてみなよというアドバイスをしたくなるものです。
こういういうアドバイスは
一通り悩み尽くした後でない限りはただの思考放棄です。
結局悩んでいる本人にとって何が問題なのかを理解できないから
無意識に話を自分の土台へと持っていこうとするのです。
でもそれは、いわば人の悩みに首を突っ込んでおいて
その人にとっての問題をよく噛み締めもせずに
簡単な答えに逃げているようなものです。
だから価値観の違う人に、あなた視点でアドバイスするのは
無意味どころか失礼になる可能性が高いです。
さらに「なんだそんなことで悩んでるのか」という思考も
無意識に振る舞いに出てしまいます。
そんな態度で
「僕はそんなこと問題にもしなかったな、こんな風に考えれば気にならないだろ?」
と持論を語った所で興味津々に聞いてくれるような素直な人なんていません。
だってその人が今まで生きていく中でずっと共にしてきた考え方です。
それを真っ向から否定するようなあなたの一言で突然「ああそれもそうか」なんて
考え方を切り替えられるわけがないですよね。
それが成り立つのは、教祖と信者のような
一方的に盲信させているような間柄くらいです。
多くの場合「悩みもしなかった? 君ってよっぽど考え無しなんだね」と、
否定的にとられてしまいます。
きっとこの人とは考え方が合わないなと感じてからは
聞く耳すら持ってくれません。
考え方の違う人だと認識された時点で
そもそも悩みをちゃんと理解してくれないことは分かりきっているので
それ以上あなたがいくら頑張って解決しようと話をしたところで
余計なお世話を押し付けてくる面倒な人になってしまう可能性が高いです。
結局の所、同じように悩んだ経験がないことについて
考え無しに相談に乗ってしまうと不要な摩擦や傷を生むだけなのです。
自分にとっても、相手にとってもいいことはありません。
だから、相手が何かに悩んでいることが見て取れたとしても、相談されない限りは
自分から人の悩みをむやみに聞いて解決しようとするのは極力避けるべきですし
ましてそれが同じように悩んだ経験が無いことであれば
あれこれ意見するなんてもってのほかです。
こういう事をよくやらかすのは、
自分の悪い所からずっと目を反らしてきた人です。
真面目なタイプに多いですが、そういう人に限って、
相手の気持ちを察するのが下手な上に自分の生き方に自信を持っています。
自分が解決してきたやり方はみんなにも通じると思っています。
やたら悩んでいる人に率先して介入して解決しようとしますが
実際は相手の悩みを解決して「ああ、いいことしたな」と自分がスッキリしたいだけです。
それを無意識に高尚な理念で上書きして
「困っている君の力になってあげたいんだ」となどと平気で語ります。
でも結局はそういう行動をする自分が好きなだけで、何かにつけて
自分は正しい、カッコイイという世界に浸りたがっているだけですから
心当たりがあるなら注意が必要です。
それから、悩みがなかなか解決できないのは大抵
それぞれ立場と目的があるからです。
例えば人間相手の悩みだったら
複雑にお互いの目的や利害関係が絡み合っているから
あっちを立てればこっちが立たずでなかなかうまくいかないのです。
絵の悩みについても同じです。
思いっきりお絵描きしていたいけど付き合いが、学業が、親の立場が
と複数の要素が絡み合っているのです。
だからしっかり悩んで解決してきた人は
「本当は嫌だけど仕方ない、相手の気持ちも尊重しながら
バランスをとってうまくやっていく方法を考えるしかない」
といった感じで折り合いをつけて少しずつ問題を解決していきます。
他方、あまり悩んでこなかった人はそもそも悩むことが嫌なので
お互いの気持ちを考慮せずに自分の裁量で一気に問題を解決しようとします。
言うなればそれはラスボスのような考え方です。
「人間は争ってばかりで愚かだ。こんな世界、私が支配して正しくしてやる」
などと神にでもなったかのような理由を持ち出して
誰も望んでいないのに大きな力で支配しようとしたり滅ぼそうとしたりするような
アニメやゲームのラスボスによくあるタイプのやり方ですね。
そしてそういう人は、それぞれの立場や気持ちなんてガン無視です。
悩むことは不毛なこと、争うことは悪いこと
頭には自分が感謝されている姿しか浮かんでいません。
心の奥底ではめちゃくちゃ尊敬されたがってるのにそれを自覚していないので
いざそのことを突かれた時に「そんなことはない」と激怒します。
もはや完全にかわいそうな人です。
さらに言うと、悩んでいないということは
解決せずに無視している可能性が高いです。
問題にしなかったということは
真剣に向き合って正面から戦わなかったことと同義です。
例えば部屋で何か妙なニオイを感じたとして
普通の人はしっかりその原因を特定して処理しますが
悩むことを放棄してきた人は、とりあえず大雑把に蓋をして放置したり
知らんぷりしたり、においに慣れることで場当たり的に解決しようとします。
対症療法ばかりで根本的に解決しようとしないのです。
だからそういう人は普段サボっている分、問題解決能力が極端に低く
よく失敗するのに失敗だと認められず、なぜ自分が評価されないのか
どうすれば改善できるのか、なかなか答えを見つけ出せません。
すぐに諦めて放置したり、別のことに走ったりします。
つまり、こういう人は悩みから目を反らしてきたせいで
想像力や成長が極端に遅くなり、大局的に見ると大きく損をしているかもしれません。
こういう人が本当の意味で他人の役に立ったり助けになるためには
何よりも自分の悪い部分、汚い部分を自覚することが不可欠です。
話を戻しますが、悩みに対する解決法なんて本当に多種多様です。
絵が苦手にしても、同じような悩みに見えても
人によって本当に色々な方面での問題点を抱えています。
そして、これら全てのニーズに対して
次々に答えていこうと思ったら、とても個人では対応しきれないことです。
前述のように、こういった悩みについての対策というのは
自分も実際にそのことで悩み、自分なりに向き合って解決してきた事でなければ、
なかなか人の心に響くような回答を書くことなんてできません。
だから、FAQのように数で勝負しようとするのはあまり得策ではないのです。
あなたは今までお絵描きで
どんな苦労や悩みを抱えてきたでしょうか?
悩まずにすんなり通過できたこともあれば、
真剣に向き合ってきた苦労や悩みもたくさんあったはずです。
もし自分の持つ経験を価値にして誰かに提供したければ
まずはあなたが感じたことのある悩みを一つ見つけて、
それがなぜ問題なのか、解決するとどうなれるのか
そして実践した解決策を書き出してみてください。
そして、その結果どうなったのか、実際に解決できたか
完全には解決しなったとしてもどの程度の効果が得られたかをまとめてみましょう。
一度自身で苦労したことのある悩みならば
たった一つのトピックだけでも十分記事にできるほどの内容が書けると思います。
あなたの具体的な体験を踏まえた悩みと解決法1つは
どこにでもあるような一般的な悩みと解決法10パターン以上の価値を持ちます。
自分の想像に及ばないような多くの悩みを集めて
無理に解決しようとするのではなく
あなたがお絵描きで最も考えてきたことや
悩んできたことについて一つ一つ、
丁寧にまとめたほうがよっぽど価値のある情報になります。
そしてそれはあなたにしかできないことです。
一度経験して同じように悩んだ分野だからこそ
深く理解して解説することができます。
同じ悩みを抱える人にとって
これほど価値のある情報はないはずです。
そういうノウハウほどお金を払ってでも知りたくなります。
範囲は狭くてもいいんです。
むしろ狭く絞った方がより深く、オリジナリティのある内容を描けます。
例えば人物にしても顔に絞って
顔の中でも目に絞って
目の中でも目の塗り方に絞って
目の塗り方でもハイライトに絞って...
とどんどん限定していきましょう。
自分の持つ得意なスキルを活用して
教える側の人間になるというのはとても素晴らしいことです。
しかし、人に絵の描き方を教える上で最も大切なことは、
まずはあなたの描く絵や生き方といった
あなた自身の魅力を、教える人に理解してもらうことです。
生み出す作品や経験に魅力を感じた人だからこそ
喜んで話も聞きますし真剣に教えてもらいたいと感じるはずですよね?
悩みの解決の他にも、自分について知ってもらうこと、
自分の魅力をアピールしていくことも
合わせて実践していくとより効果的かと思います。
僕へのメールはこちらからお気軽にどうぞ。
個別返信はお約束できませんが、必ず目を通しています。
- 著者プロフィール
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ふぉくすけ
お絵描き・小説・ゲーム制作など
創作活動が大好きな元SE。
グラフィッカーになる夢を諦め一般企業に
就職するも、多くの理不尽を当然のように
受け入れながら働く「雇われる生き方」
そのものに強い違和感を持つ。
会社員として働きながら生き方の模索を続け、
Web媒体の収入が月給を上回ったため独立。
現在は、お絵描きをはじめとする、
創作活動で食べていきたい人に向けた
情報発信をメインに活動中。
現在キャンペーン期間中にて
お絵描きで自由を手に入れるための特別講座
を無料配布中
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